左官の材料は何か知っていますか? 奥深い素材の世界をのぞいてみませんか?

皆さん、こんにちは。

東京都西東京市を拠点に、関東一円で一般住宅から集合住宅、ビル、店舗、公共建築などの内装左官・外装左官を手掛けている武蔵組です。


建物の壁・床・塀などを、鏝(こて)を使って塗り仕上げる仕事のことや、それを専門とする職人のことを「左官」と言いますが、その左官にどんな材料が使われているか、ご存じですか?

今回は、奥の深い左官材料や、左官職人の仕事の魅力についてご紹介します。




■海藻に貝殻も! 自然の恵みをあますところなく使い切る先人の知恵



一般的に左官壁(土壁)とは、土に砂や藁を混ぜ、水で練ったものを塗り固めた壁のことを意味します。

ただし地域によって使う材料はさまざまで、土壁日本の豊かな風景をかたちづくってきました。


代表的な土壁の一つとして、漆喰(しっくい)があります。

消石灰に水、スサや海藻から採れる糊などを加えたものです。

スサは麻の繊維や紙、藁などを細かく切ったもので、収縮防止や補強の効果があります。

海藻糊は、保水効果や粘度調整の目的で加えており、ツノマタや銀杏草などを炊き出して糊をつくっていました。

今なら海藻からわざわざ糊をつくるの?と思われるかもしれませんが、当時にしてみれば、身の回りにあるものを素材として使うのは当たり前。

そして海の近くの地域では、ハマグリや牡蠣などの貝殻を焼成した「貝灰」も、漆喰に加えていたものです。


ちなみに漆喰は調湿性に富むことでも知られており、室内に使うと夏は余分な湿度を吸収し、逆に乾燥する冬は水分を放出して、心地よい空間をつくってくれます。また強アルカリ性なので、抗菌・消臭効果なども期待できるすぐれもの。


ひと昔前の漆喰壁といえば、いかにムラなく平滑に見せるかが左官職人の腕の見せどころと言われていましたが、今は時代も変わり、あえて塗りムラを残すなど、あたたかみを出した表情も人気を博しています。




■漆喰と人気を二分する珪藻土は、もとを正せば「藻」の化石!



珪藻土は漆喰と同じく人気の左官材で、珪藻マットなどの小物にも使われているので、認知度が高いかもしれませんね。


珪藻土というのはその名が示す通り、もとを正せば「藻」で、藻類の一種である珪藻の殻の化石からなる堆積物(堆積岩)が原材料です。

海や湖・沼などで珪藻が大量に増殖して死滅すると、死骸が水底に沈殿し、それらに含まれる有機物がやがて分解されて、最後には二酸化ケイ素を主成分とする殻だけが残ります。このような珪藻の化石からできた岩石が珪藻土で、日本では北海道・稚内や、秋田、市川・能登、岡山・韮山、大分、鹿児島などが有名な産地として知られています。


殻には無数の小さな孔が開いており、漆喰と同じく非常に調湿性能の高い左官材です。さらに消臭・吸音効果が期待できるのも特徴。自浄効果もあり、ちょっとしたワインやお茶などのシミなどはいつの間にか目立たなくなります。

漆喰と異なり、ややざらっとした風合いに仕上がります。




■にがりを入れるのは豆腐だけじゃない! 実は土間にも使われてきたんです


豆腐に使われていることで知られる凝固剤「にがり」は、海水から塩をつくる際にできる、余剰なミネラル分を多く含む液体です。豆腐は、豆乳にこの「にがり」を加えたものですが、実は左官でも使われていることをご存じですか?

それが伝統的な土間「三和土(たたき)」です。


三和土は「たたき土」の略で、赤土・砂利など消石灰とにがりを混ぜて練り、塗ったあとに叩き固めるというつくり方をします。三つの材料を使うため、「三和土」という名称で呼ばれるようになりました。


にがりは増粘性があるため、入れると練った土が分離しにくく、叩くことで締まりやすくなります。また、にがりには吸湿性があるため、表面が乾燥してボロボロになりにくいのも、使われてきた理由の一つ。さらに凍結温度が低く凍害に強いといった特徴もあります。

今ではセメントが登場して昔ながらの三和土は少なくなりましたが、それでも本格的な和風の家や日本建築、古民家のリノベーションなどで登場しています。




■最近は布や果実をアップサイクルした左官材も!



左官は日本の風土に育まれた建築技術ですが、漆喰や珪藻土は外国でも使われています。たとえばギリシャでは紺碧の海に真っ白な家が連なる風景が有名ですが、建物に使われている材料は漆喰です。外国製の漆喰には日本製とはまた異なる特徴があり、建築現場ではクライアントの要望に応じて、こうした外国製の左官材を使うこともよくあります。


また漆喰や珪藻土だけでなく、セメントと砂に水を加えて練ったモルタルも、施工する機会の多い左官材です。

モルタルは無機質でクールな質感が人気を博していますが、クラックというヒビが入りやすいのが欠点。

これを改善したのが、モルタルの材料に特殊な樹脂を加えたベルギー生まれの左官材「モールテックス」です。表面強度があり耐水性や弾性にもすぐれ、水まわりや家具にも使える左官材として人気を集めています。


さらに最近ではデニムの端材をアップサイクルした左官材や、リンゴの搾りかすに膠(にかわ)や珪藻土などを混ぜてペースト状にした素材なども開発されており、あらためて左官材料の自由さがうかがえます。




■左官の材料は多種多様! 仕上がりのバリエーションは無限大



伝統的なものから最先端の材料まで紹介しましたが、ひと口に左官材といってもさまざまです。

色のバリエーションも豊富で、オリジナルの色を調合することもあります。

さらに塗り方を変えて表情をつければ、その仕上がりは無限大。

代表的な道具である鏝(こて)も、用途や目的に応じて何十本もの鏝を使い分けます。呼び方は地域によって異なりますが、鶴首雀口鏝やスルメ鏝、元首ペンギン鏝など、面白い名称の鏝もありますよ。

こうした道具を使い分けながら、腕を動かすリズムや力の強弱などにより、手がけた職人の個性が壁の仕上がりにあらわれるのも、左官壁の面白いところです。


このように初心者の方にとって学ぶことはたくさんありますが、知れば知るほど、もっと深掘りしたくなるのが左官という仕事の魅力です。

手を動かした跡がそのままかたちになるので、大きなやりがいを見出すことができるでしょう。

もっと知りたい、もっと良い仕事をしたい、とモチベーションを高くもつことができるのも、左官ならではの特徴です。




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左官は、しっかり技術を身につけられて、キャリアアップとそれに伴う給与アップも望める仕事です。

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